Shinji Nishiguchi
収穫時の発病鱗茎
立毛中の発病株
(株元に分生子が見える)
鱗茎ほか、立毛中は地際部から発病することが多い。
苗床末期から収穫期まで発生し、さらに貯蔵期間においても発生する。立毛中では、地際や葉身が水浸状に腐敗し鮭肉色または汚白色となり、表面に灰色のかびが観察される。収穫期には根盤部が褐変腐敗する。
病原菌の発育温度域は5~30℃で、適温は20~23℃程度である。病鱗茎上の分生胞子は、晩秋から冬季にかけて圃場に飛散し、タマネギの葉鞘から侵入、感染する。病株上に生じた分生胞子が第二次伝染源となってまん延する。分生胞子を放出飛散させるタマネギ関連施設の周辺圃場は発生が多い。また、生育初期の温暖多雨や前作での本病の多発は、翌作の発病が多くなる。土壌伝染や種子伝染はしない。
浸透移行性により進展阻止効果を有するので発病初期から予防的に散布すると効果が高い。
二次感染株
(初期病徴)
全身感染株
(葉身がわん曲)
葉身に発生。
生育初期にみられる全身感染症状と二次感染によって現われる病徴の二種類があり、全く異なった病徴である。前者は、秋季の幼苗期に感染した株が早春になって発現する。生育が不良、葉身はわん曲し、しだいに淡黄色となる。降雨にあうと葉身全面にかびが密生する。春先にみられる二次感染株では、葉身に紡錘形で淡黄色輪郭不鮮明な大型病斑を生じ、降雨後にはその表面にかびを密生する。被害葉は淡黄色から灰白色にかわり萎凋枯死する。病斑が古くなると二次寄生菌により漆黒色ビロード状のかびがおおうため、圃場全体が焼け焦げたようになる。
前年発病圃場では、卵胞子が土壌中にあるため翌年も発生しやすくなる。15℃前後の気温で曇雨天が続くと多発生する。秋季の温暖多雨は苗床での感染量を多くする。
初期病斑
全身に病勢が進展
(葉身がわん曲)
立毛中は地際部や葉鞘基部から発病することが多い。収穫時以降は鱗茎の腐敗。
2月中旬頃から発生がみられる。発病株は生育不良となり、次第に全身が萎凋し枯死消失する。生育盛期では、葉身に淡黄白色壊死斑点を不規則に生じて、やがて萎凋軟化し、淡黄白色の粘い菌泥がある。収穫時までに感染した鱗茎は貯蔵中に腐敗し市場クレームとなることもある。腐敗臭が強くないのが特徴である。
強風や機械的に生じた傷、害虫の食害痕などの傷口から侵入する。暖冬多雨や春季の生育盛期が多雨の年には発生が多く、窒素質肥料の過施用や晩期追肥は発生を助長する傾向がある。
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