Shuichi Kuroki
発病した花弁等が
落果して発病が拡大
果実先端の菌叢
被害は、幼果を中心に、果実、葉、茎に発生する。
基本的に幼果の花弁部分から発生し、発病した花弁が落下して葉や茎に発生する。また、花弁が落下しない場合には、果実に発生する。茎が発病した場合は、発病部より先端の茎葉が枯死することがある。
花弁や柱頭が発病して白色の菌糸を生じ、次第に果実部分に広がって水浸状になる。症状が進むと病変部には白色の菌糸に混じって、ネズミの糞状の黒褐色の菌核塊が形成されることがある。茎で発病すると、それより先端の茎葉が萎凋し、株が枯死することもある。
土壌中に残った菌核から子のう盤(小さなキノコ)が生じ、子のう胞子を飛散させ、伝染する。圃場内外に罹病残渣を放置すると、被害が増加する。子のう盤は、土が濡れる場所に多く、ハウスサイドの保温ビニルから水が滴り落ちているところなどによく見られる。
低温、多湿条件下で発生する。促成栽培では11月ごろから発生し、翌年2~3月ごろに再び多くなる。外気温が低く栽培施設の密閉度が高いが、暖房機が作動しないような気温の時期に発生が多い。普通の花弁は果実の成長に合わせて発病することなく果実から落下するが、急に寒波が来て果実の肥大スピードが落ちると、開花から花弁の落下までの時間が長くなるので、発病が増加する。
菌核病は多犯性(さまざまな植物に対して病害をもたらす性質)で、他の果菜類や葉菜類でも発生するため、ほ場周辺の作物を含めて対策を行い、できるだけ菌核が土壌中に残らないようにする。
薬剤散布は、栽培施設の密閉度が高まる10月下旬ごろから行うが、実際の発病が始まる11月上旬には発病を確認していなくても必ず防除を開始する。すでに発病している場合は、かなりの数の潜在的な発病があるものと考え、連続した防除を行う。ただし、同一系統の薬剤を連用すると耐性菌発生の可能性があるので、異なる系統の薬剤をローテーションで使用する。
灰色かび病と発生時期が重なり、有効な薬剤も共通することが多いので、体系的な防除を行う。
果実先端の菌叢
幼果の水浸状の症状
果実先端の水浸状の症状
被害は、しおれた花弁を中心に、果実、葉、茎に発生する。
菌核病と同様に、基本的に幼果の花弁部分から発生し、発病した花弁が落下して葉や茎に発生する。発病した花弁が茎に落下して付着した場合は、その茎の部分も発病し、それより先の茎葉は萎凋することがある。葉では大型病斑を形成することがある。また、菌核病と異なり、植物体の部分的に枯死した部位や、ほ場内の残渣(収穫後の葉や茎)に発生することがある。例えば水滴が当たって枯れた葉の部分や、収穫時にできた傷などである。このため、出荷時には気づかないが、出荷先で果実に発病していることがある。
しおれた花弁や柱頭(雌しべの先端部)が発病して、次第に果実部分に広がって水浸状になる。花弁に限らず感染部位には、湿度の高いときに灰色~淡褐色、粉状の菌叢を生じ、多量の胞子を形成する。発病残渣と共に土壌中に残った菌核から子のう盤(小さなキノコ)が生じ、子のう胞子を飛散させ、伝染する。湿度の高いときには被害部に灰色~淡褐色、粉状の菌叢を生じ、多量の胞子を形成する。
低温、多湿条件下で発生することが多いが、周年発生する。湿った空気が滞留するような環境であれば発病するので、露地栽培でも霧がかかることが多い中山間のほ場や、無加温施設などで被害が多い。暖房機を使用する施設でも、外気温が低く栽培施設の密閉度が高いが暖房機が作動しないような気温の時期に発生する。このため、菌核病と同様に促成栽培では11月ごろから発生し、翌年2~3月ごろに再び多くなる。
灰色かび病は多犯性(さまざまな植物に対して病害をもたらす性質)で、他の果菜類や葉菜類でも発生し、残渣にも発生するため、ほ場周辺の作物やほ場内外の残渣が残らないようにする。
湿った空気が滞留するような条件が発生したり、予想されるときには薬剤散布を行う。施設栽培では、施設の密閉度が高まる10月下旬ごろから行う。発生好適条件が発生するたびに防除を行うとともに、暖房機が作動するように調整を行う。耐性菌の発生事例が多く報告されており、同一薬剤を連用すると耐性菌発生の可能性があるので、異なる系統の薬剤を交互に使用するなど、体系的な防除を行う。
葉の初発病斑
葉の多発病斑
茎の病斑
被害は、主に葉に発生し、重症化すると茎にも発生する。
発病始めには、葉の表面に白い粉状の菌叢が広がる。症状が進むと葉柄や茎にも発生が見られるようになり、茎葉全体が菌叢に覆われるようになる。
乾燥条件で多発することがあり、茎葉の濡れには弱いが、高湿度に弱いわけではない。白い胞子はやや気温が低く、湿度が95%以上のような高湿度条件であるが濡れていない条件で多く形成され、湿度50~60%の低湿度条件で飛散する。このため、梅雨など雨が多い時期の露地作では少なく、梅雨明け後にまん延する。施設栽培では、11月ごろと2月後半から3月ごろに発生し、その後まん延することが多い。
基本的に1年中発生するが、草勢が低下すると多発する傾向があり、特に強い着果負担がかかると多発する。
草勢が弱らないように適切な栽培管理を行う。特に、着果負担がかかってくる時期には予防的に薬剤散布をする。発生初期では、胞子が濡れに弱いこともあって比較的容易に薬剤で防除できるが、症状が進んでくると防除は難しくなってくる。葉の表裏いずれにも発生するため、薬剤散布はできるだけ丁寧に、複数回行い、薬剤の散布ムラができるだけおきないように行う。特に、育苗期の子葉に発生すると、防除は容易ではないので、苗や定植時の予防は徹底する。
本菌は、生きた植物にしか寄生できない絶対寄生菌であるため、ほ場の周囲にメロンやスイカなどのウリ科植物がある場合には発生源になる。また、きゅうりの被害は少ないが、ピーマン・なすへ感染する菌がきゅうりに感染することもあるため、こちらの対策も行う。
葉の大型病斑
葉の小型病斑
葉の中型病斑
ベと病に似るが、
病斑は葉脈を超える
葉が枯死する症状
被害は、主に葉に発生するが、茎や流れ果などにも発生する。
淡褐色、円形の小斑点を生じる。徐々に拡大して大型病斑になる。べと病斑に似ているが、ベと病斑は葉脈で完全に仕切られるのに対して、褐斑病は葉脈からにじみ出るように黄褐色の病斑が広がる。発生源が近くにある場合には、葉全体に小斑点を生じる。茎や葉柄にも発生することがあり、感染部位には黒褐色綿毛状のかびを生じる。茎に発生した場合には、発生部位より先の茎葉は、萎凋枯死する。
ベと病などより高温を好むが、多湿条件で発生するのは同じである。露地栽培では降雨の多い時期の作型に発生するが、被害が大きいのは施設栽培である。窒素過多や、ベと病が発生した後など、葉が柔らかい状態になると多発する。
病原菌は被害部位とともに土壌中で生存し、第一次伝染源となる。病斑上に形成される胞子が風によって飛散されることで、二次伝染が起きる。このため、残渣の処分は徹底する。また、保温ビニルやかん水チューブなど、一度使用した資材に付着していることが知られているため、資材を再利用するときは、太陽熱消毒や洗浄などを行ってから利用する。
密植を避け、排水・風通しを良くし、過湿を避ける。窒素過多や草勢が弱ると多発するので、適切な栽培管理を行う。
抵抗性品種を利用するとともに、一旦多発すると防除が困難になるので、発病ごく初期から薬剤を散布する。
摘葉部の症状
茎の症状
茎の病斑に発生したヤニ
葉の水滴痕に
発生した病斑(柄子殻)
被害は、茎、葉、果実に発生する。
茎葉に付いた傷から感染することが多く、収穫や摘葉による傷や、茎の肥大に伴って割れた部位、石灰欠乏症により落下傘状になった葉の縁、葉に水滴が落ちて白く枯れた部分などから発生する。また、幼果の花弁部分から発生し、果実を腐敗させたり、果実中心部がホウ素欠乏症のように赤褐色に変色したりすることがある。このため、出荷時には気づかないが、出荷先で果実中心部の変色に気づき、クレームの原因になることがある。
茎や葉の発病部は白く枯れ、黒い小黒点(柄子殻)が生じる。茎の病斑部は水浸状になり、やにを出しながら少しずつ拡大する。このため、発病部位より先端の茎葉は、萎凋枯死する。
葉の病斑は葉脈間に進展し、不整形な大型病斑になる。果実に発生したときは、花弁部分から菌が侵入し腐敗する。
多湿条件下で発生することが多い。被害残渣とともにほ場内に残っている病原菌が第一次伝染源になる。降雨や潅水時の水のはね上げによって飛び散り、最初の感染が起こることが多く、その後のまん延にも水滴の役割が大きい。また、種子に胞子が付着することにより、種子伝染することもある。
他の高湿度を好む病害と同様に、暖房機を使用する施設で栽培施設の密閉度が高く、暖房機が作動しないような気温の時期に発生する。このため、菌核病と同様に促成栽培では11月ごろから発生し、翌年2~3月ごろに再び多くなる。密植や過繁茂など、通気性が悪い状態になると発生しやすい。
密植を避け、過繁茂にならないよう適切な栽培管理を行う。薬剤散布では、茎の地際部まで散布薬液が付着するように、しっかり散布する。また、摘葉した部位や、茎が屈曲して傷ついた部位から発生することが多いので、摘葉や茎を曲げるような作業をしたときには、遅れず防除を行う。発病残渣は重要な伝染源であるので、残渣対策はしっかり行う。
病斑部の中心が破れる葉の症状
果実の症状
被害は葉や茎、果実に発生する。
葉では黄褐色、円形の病斑を生じ、病斑の中央は破れやすくなる。葉柄や茎には紡錘形のくぼんだ病斑を生じ、果実では円形~楕円形の深くくぼんだ病斑を生じる。多湿時には病斑部にサーモンピンクの粘液(胞子のかたまり)を生じる。
水媒伝染であるため、伝染には降雨等の水滴が必要である。主に雨水の跳ね返りにより感染が始まるので、露地栽培で発生が多く、スプリンクラーなどの頭上散水を行っている場合や、天井からの水のぼた落ちがある場合には、施設栽培でも発生することがある。
病原菌は被害残渣とともに圃場に残り、次作の伝染源となるため、残渣の分解や土壌消毒を行う。また、支柱などの資材に付着して伝染源となることがあるため、再利用する時は使用前に洗浄する。病斑上に形成された胞子が、水滴とともに飛散してまん延するため、雨よけ栽培などの被覆栽培にしたり、畝をマルチ被覆したりすると減少するが、被覆資材から水滴のぼた落ちが無いようにする。
一旦被害が多発生すると防除は困難になるので、発病初期に防除を徹底する。
葉の病斑
葉の病斑は葉脈で仕切られる
葉裏の菌叢
被害は、葉に発生する。
葉脈に区切られ、角ばった淡黄色~黄褐色の病斑が発生するが、多発すると病斑がまとまって大型病斑となり、やがて葉全体が黄褐色になって乾燥し、もろくなり、枯死する。病斑の裏側には黒色ビロード状の菌叢が見られる。
褐斑病の病斑に似ているが、ベと病斑は葉脈で完全に仕切られるのに対して、褐斑病は葉脈からにじみ出るように黄褐色の病斑が広がる。
基本的に1年中発生するが、気温がやや低く、多湿条件で葉が濡れていると発病しやすい。感染には水滴がある条件が必要で、露地栽培では梅雨など雨が続き、葉の濡れ時間が長い期間に発生が多い。施設栽培では、基本的に常に発生する。草勢が低下すると多発する傾向があり、急な寒波や摘心・強摘葉などの強いストレスを受けた直後に発生することが多い。特に強い着果負担がかかると多発する。
密植を避け、排水・風通しを良くして、過湿を避ける。マルチ栽培や、栽培施設内の湿度が下がるような送風管理をすると被害が減少するため、保温用ビニルを適切に選び、防霧効果など資材の機能性を発揮させる。草勢が弱ると多発するので、適切な栽培管理を行う。特に、着果負担がかかってくる時期には、適切な追肥と予防的に薬剤散布をする。
まん延が早く、重症化すると防除が難しくなるため、発病ごく初期から薬剤を散布する。残渣は圃場外に持ち出し処分する。特に、育苗期の子葉に発生すると、防除は容易ではないので、苗や定植時の予防は徹底する。
カボチャ台木に感染する
系統による被害
根から侵入し、導管部(水の通り道)を侵す。茎の基部が縦に割れて、白色ないしサーモンピンクのかびを生じることがある。
下葉から萎凋するが、病勢が進むと上位葉まで萎凋し、株全体が枯死する。茎の地際部は黄褐色となり、くびれてヤニを出し、やがて白色~淡桃色の菌叢を生じる。茎の導管部は上部まで褐変し、内部に菌糸、小型分生子がみられる。
自根きゅうりでは発生しやすい。かぼちゃ台木を使用すると防げることが多いが、穂木から出た根、地面に触れた茎や葉柄から感染することがある。
土壌中や被害残渣中の厚膜胞子が第1次伝染源となるため、まずは、土壌消毒を行う。接ぎ木栽培でも穂木の根の管理や整枝をしっかり行う。
ZYMVによるモザイク症状
葉脈透過症状(左)と
正常な葉(右)
ウイルスにより感染する。被害は主に葉に発生するが、果実に症状が出るウイルスもある。
キュウリモザイクウイルス(CMV)、ズッキーニ黄斑ウイルス(ZYMV)、パパイヤ輪転ウイルス(PRSV)、カボチャモザイクウイルス(WMV)によって起きる。
CMVは、はじめ葉に退緑小斑点を多数生じ、後に明瞭なモザイクとなる。明瞭な病徴は感染葉を中心に数枚の葉に連続して発生するが、その後新たに展開した葉には病徴が見られない場合がある。果実にもモザイクを生じる。
ZYMVによるモザイク病ははじめ生長点付近の未展開葉に明瞭な葉脈透化症状を現し、後に奇形を伴った激しいモザイクを生じる。果実にも激しいモザイクと奇形を生じる。
PRSVによるモザイク病は葉脈透化、モザイクなどの症状を生じるが、黄化症状が強く現れる。
WMVによるモザイク病はCMVやZYMVと比較して葉の病徴が軽く、外見上健全株と見分けがつかない場合が多いが、果実には明瞭なモザイクを生じる。
かぼちゃを台木とした接木栽培では、CMVとZYMV、WMV、PRSVのいずれかあるいは2種以上の重複感染によって、株が萎凋することがある。
いずれのウイルスも、アブラムシによって媒介されるため、露地栽培や施設栽培でもアブラムシが発生するような条件では発病してくる。一旦発病すると、ハサミなどに付着した汁液によりまん延する。
露地栽培では抵抗性品種を利用し、施設栽培では防虫ネットを利用するなど、アブラムシの侵入を防止する。いずれの作型でも、ハサミの消毒を徹底する。一旦発生すると治療法は無いので、発病株は除去する。
葉の黄化・モザイク症状
新葉に発生したえそ症状
果実の症状
緑斑モザイクウイルス(KGMMV)により感染する。被害は葉と果実にも発生する。
最初に生長点付近の幼葉に退緑斑を生じるが、後に濃淡の明瞭なモザイクを呈し、奇形となることが多い。果実にも火ぶくれ状の激しいモザイクを生じる。
第一次伝染源は感染株から採種した汚染種子であるとされるが、発生株が1株に限られるなど不明なことも多い。一旦発病すると、ハサミなどに付着した汁液によりまん延する。株の接触により感染するとする報告もある。
一旦発生すると治療法は無いので、発病株は除去する。汁液感染するので、ハサミの消毒を徹底する。また、土壌中の残渣が感染源となることがあるので、残渣の除去、分解を徹底する。
葉の黄化症状
葉脈を残して黄化した葉
苦土欠乏症状に似る
キュウリ退緑黄化ウイルス(CCYV)により葉に発生する。
退緑症状を伴う小斑点を生じ、その後大型斑点症状や、葉脈間が退緑した黄化症状になる。一見すると、苦土欠乏症状である。発病葉から上位方向に進展する。発病時期が早いほど果実の収量や品質に影響する。
ウイルスはタバココナジラミによって媒介される。周辺雑草やウリ科植物でウイルスを保毒した媒介虫がほ場に侵入して、発症する。ハサミ等による汁液伝染は起きないが、ほ場内の少数の媒介虫で、広くまん延する。
一旦発生すると治療法は無いので、発病株は除去する。施設栽培では防虫ネットを利用するなど、タバココナジラミの侵入を防ぐとともに、個体数が増加しないように管理する。タバココナジラミは、殺虫剤に対する抵抗性を獲得していることが多いので、生物農薬を含めた体系的な防除を行う。特に、育苗期に感染しないように、防除を徹底する。
葉脈上に発生したえそ症状
葉の黄化症状
葉の枯死症状
葉柄の近くから
症状が強くなった葉
黄化が進んだ葉
えそ症状病斑
メロン黄化えそウイルス(MYSV)により感染する。被害は葉に発生するが、重症化すると果実にも発生する。
最初に葉脈透化を生じ、モザイク、葉脈えそを生じる。果実にもモザイクや奇形などを起こすことがある。
ウイルスはミナミキイロアザミウマにより媒介される。周辺雑草やウリ科植物でウイルスを保毒した媒介虫がほ場に侵入して、発症する。ハサミ等による汁液伝染は、通常栽培では起きないが、ほ場内の少数の媒介虫で、広くまん延する。
一旦発生すると治療法は無いので、発病株は除去する。施設栽培では防虫ネットを利用するなど、ミナミキイロアザミウマの侵入を防ぐとともに、個体数が増加しないように管理する。ミナミキイロアザミウマは、殺虫剤に対する抵抗性を獲得していることが多いので、生物農薬を含めた体系的な防除を行う。特に、育苗期に感染しないように、防除を徹底する。