• 児玉 不二雄

    さん

    Fujio Kodama

    • 一般社団法人 北海道植物防疫協会  理事(執筆時、2022年11月)
    • 北海道大学農学部・同大学院(修士課程)を経て、1969年より、北海道立上川農業試験場、同中央農試、同北見農試で主に土壌病害の発生生態と防除に関する研究に従事。2000年3月、北見農業試験場長退職。同年6月より、(社)北海道植物防疫協会会長・同常務理事を経て、現在、同協会理事。タマネギ乾腐病とその防除に関する研究で農学博士(1982年7月 北海道大学 2285号)。
    • 著書:
    • 北海道病害虫防除提要(第5,6,7版:北海道植物防疫協会刊・共著)、作物病害図説(養賢堂・共著)、作物のフザリウム病(全国農村教育協会・共著)他
  • 児玉 不二雄 児玉 不二雄
  • 一般社団法人 北海道植物防疫協会  理事
    (執筆時、2022年11月)
  • 北海道大学農学部・同大学院(修士課程)を経て、1969年より、北海道立上川農業試験場、同中央農試、同北見農試で主に土壌病害の発生生態と防除に関する研究に従事。2000年3月、北見農業試験場長退職。同年6月より、(社)北海道植物防疫協会会長・同常務理事を経て、現在、同協会理事。タマネギ乾腐病とその防除に関する研究で農学博士(1982年7月 北海道大学 2285号)。
  • 著書:
  • 北海道病害虫防除提要(第5,6,7版:北海道植物防疫協会刊・共著)、作物病害図説(養賢堂・共著)、作物のフザリウム病(全国農村教育協会・共著)他

※病害解説中の時期は北海道の場合

●印のモザイク病、輪紋病、褐紋病、根腐病、黒点病に関しての解説はありません。

だいずの主要病害検索表

    菌核病

    • 菌核病(清水原図) 菌核病(清水原図)

      菌核病(清水原図)

  • 菌核病

    発生する部位

    莢、茎、葉に発生する。

    被害の特徴/見分け方

    葉では、楕円形で先の尖ったまわりがにじんだ濃緑色の病斑を生じ、のちに拡大し軟腐症状となる。病斑部には白色綿状のかびを生じる。乾燥が続くと、病斑は淡褐色あるいは灰白色の止まり型病斑となり、輪紋を生じることがある。茎では淡褐色水浸状の病斑を生じ、白色綿状のかびを形成する。病斑は拡大して茎を取り巻き、大型の乾燥した白斑となる。菌糸に接触した茎や莢はつぎつぎと侵され、株全体にまん延する。病斑の表面や内部に黒色のネズミ糞状の菌核を多数形成する。莢では水浸状の不定形病斑を生じ、軟腐状となり、表面に白色綿状の菌糸を生ずる。病勢が進むと莢は白化して、菌糸は白色菌糸塊となり、黒変してネズミ糞状の菌核となる。

    発生しやすい条件

    菌核で越年する。菌核は被害を受けた茎、葉、莢等の内外に形成される。収穫等で圃場に散乱した菌核は翌年子のう盤(小型のキノコ)を形成し、子のう盤上の子のう胞子が飛散し、発生源となる。子のう盤の形成は湿度と遮光が必要で、地表面を早く覆う作物が栽培された圃場ほど早く、牧草地では6月上旬、テンサイおよびバレイショ畑では6月下旬~7月上旬、インゲンマメ畑では7月下旬~8月上旬、アズキ畑では8月中旬の順に遅くなる。子のう胞子は健全な組織に侵入できず、枯死組織や傷口から侵入する。老化または落下した花弁から侵入し、それらに接触している健全葉や莢にまん延する。花弁による感染が主体で、開花後の気象が日照不足で多湿なとき多発する。乾燥条件下では病勢は停滞する。だいずの他に、インゲンマメ、だいず、アズキ、キュウリ、ジャガイモ、ナス、トマト、その他多数の作物がこの病害に侵される。

    防除のポイント

    連作すると菌核の密度が高まるので適当な輪作をする。密植、多肥栽培、窒素質肥料の加用は避ける。農薬(殺菌剤)の茎葉散布は開花期を重点に行う。

マメ類菌核病菌の伝染経路

マメ類菌核病菌の伝染経路 マメ類菌核病菌の伝染経路

    紫斑病

    • 紫斑病、子実の病斑(児玉原図) 紫斑病、子実の病斑(児玉原図)

      紫斑病、子実の病斑
      (児玉原図)

    • 紫斑病、苗の地際部が褐変(児玉原図) 紫斑病、苗の地際部が褐変(児玉原図)

      紫斑病、苗の地際部が褐変
      (児玉原図)

  • 紫斑病

    発生する部位

    葉、茎、莢、子実に発生する。被害は収量だけでなく、品質の低下も著しい。

    被害の特徴/見分け方

    葉では、はじめ表面に紫紅色の円形、のちに拡大して葉脈に囲まれた多角形の病斑を生ずる。葉柄(葉と茎をつなぐ部分)、茎では、赤褐色で円柱形の両端のとがった(=紡錘形)斑点であるが、進展すると茎を取りまき、灰紫黒色となる。 種子の病徴が最も顕著で、子実に紫色の斑紋を生じ、著しい場合は粒全体が濃紫色~紫黒色となり種皮に亀裂を生じる。この病気に感染・発病した種子(=罹病種子)を播種すると、発芽が悪く、発芽しても子葉に不規則の褐色斑点を生じ、早期に枯死する。

    発生しやすい条件

    病原菌は、主として種子に付着した菌糸で越冬し、翌年、種子上に形成された分生子が飛散し伝染源となる。罹病茎葉も伝染源となる。成熟期前後に降雨が多い年に発生が多く、紫斑粒の発生が多い。病原菌の分生子形成の適温は15~20℃で、生育温度はこれよりやや高い。

    防除のポイント

    健全種子を使用する。圃場の清掃に努める。効果の高い種子消毒する。

    灰色かび病

    • インゲンマメ灰色かび病(清水原図) インゲンマメ灰色かび病(清水原図)

      (参考写真)

      インゲンマメ灰色かび病
      (清水原図)

  • 灰色かび病

    発生する部位

    主に葉、莢に発生する。茎に病斑が拡大することがある。

    被害の特徴/見分け方

    花弁から侵入することが多い。花弁では、先端がやや尖った楕円形の斑点が生じる。この斑点の回りは濃い綠色となっている。花全体が褐色となり、やがて灰色のかびを生じて腐敗落下する。莢では、最初花弁の付着部に暗緑色水浸状の病斑を生じ、急速に拡大して腐敗し、その表面に灰色のかびを密生する。また散った花弁が葉に付着した場合、花弁で増殖した菌が葉に侵入し、多くの場合輪紋状の褐色病斑が見られる。

    発生しやすい条件

    被害組織内で菌糸、菌核で越年する。翌年条件が良くなると分生子を形成し、それが飛散して開花後の老衰した花弁に感染し、そこから莢、茎葉に拡がる。開花期以降、降雨の多い低温湿潤天候が続くと多量の分生子を形成、飛散するため多発する。また、風通しの悪い過繁茂状態で発病しやすい。だいず等のマメ類のほか、ジャガイモ、その他多数の作物がこの病害に侵される。

    防除のポイント

    被害茎葉は処分し、圃場の排水を促進し、過繁茂を避けるため施肥量に注意する。発病好適条件である降雨の多い低温湿潤天候では、農薬(殺菌剤)を開花1週間後に1回目の茎葉散布を行い、その後7~10日おきに計3回散布する。

    わい化病

    • わい化病、葉の縮葉およびわい化症状 わい化病、葉の縮葉およびわい化症状

      わい化病、葉の縮葉およびわい化症状(萩田原図)

  • わい化病

    発生する部位

    本病に感染すると開花後にサヤが付かないか、またはサヤが付いても種子の肥大が抑制される。このため著しく減収するので、だいずの重要病害の一つである。

    被害の特徴/見分け方

    病原ウイルスは茎の養分の通路にだけに存在し、養分供給を阻害する。その結果、生じる症状はわい化型、縮葉型、および黄化型の3つに大別される。
    わい化型は、葉が小型化し、葉と茎をつなぐ部分(葉柄)や節間が短縮し、株全体が萎縮する。縮葉型は、葉が小型化するとともに、葉縁および葉の表面がちりめん状に縮葉する。一方、黄化型では、葉の葉脈付近以外の部分で黄化する脈間黄化症状が特徴で、わい化の程度は激しくない。
    発病した株は、健全株に比べると縮葉、萎縮するので、簡単にだいずの他病害と区別することができる。圃場においては、発病株が畦に沿って連続する場合、あるいは圃場全体に点々と散在する場合がある。発病個体は生育後期になっても、枯れ上がることがなく、いつまでも緑色を保つ。
    寄主範囲は、マメ科植物に限られる。だいず以外の主な感染植物のうち、インゲンマメ、エンドウ、ラッカセイ、ソラマメではいずれも軽い退緑、黄化症状を示すが、アカクローバ、シロクローバでは病徴は認められない。

    発生しやすい条件

    病原ウイルスは、基本的にはジャガイモヒゲナガアブラムシによって永続的に伝搬されると見てよい。伝染源は牧草地やだいず畑に自生するアカクローバ、シロクローバなどのクローバ類である。ここで卵で越冬し、ふ化したアブラムシがクローバ上で育つことにより保毒し、次世代またはその次の世代のアブラムシが、主に5月末~6月にだいず畑に飛来し感染を起こす。さらに、そこで増殖したアブラムシが他の株へ移動することに伴って、周囲の株へ連続的にウイルスが伝搬される。春先の気温が高めに経過すると、ジャガイモヒゲナガアブラムシの出現時期が早く、発生量も多くなり、わい化病が多発する傾向がある。

    防除のポイント

    伝染源植物はだいず畑周辺のクローバ類と考えられるので、伝染源植物の除去など、ほ場環境の清掃に努める。ジャガイモヒゲナガアブラムシを防除する。最も効果的な方法は抵抗性品種の利用である。しかし、現在のところ利用可能な品種は用途や栽培適地が限られるので、実状にあわせて選択を考える。

    斑点細菌病

    • 斑点細菌病(谷井原図) 斑点細菌病(谷井原図)

      斑点細菌病(谷井原図)

  • 斑点細菌病

    発生する部位

    葉、葉柄(葉と茎をつなぐ部分)、茎に発生する。通常被害は軽微である。

    被害の特徴/見分け方

    初発は、双葉が展開して最初に出てくる葉(=初生葉)に認められる。初生葉で病原細菌が増殖して上部にある葉に拡大する。初生葉に生じた微小で細長い斑点(=水浸状病斑)は、次第に拡大、融合して大きな病斑となる。病斑の色調ははじめ暗緑色で、後に黒褐色となる。多湿な条件下では、病斑の裏面に病原細菌の塊(かたまり)が肉眼でも見えるようになる。この病原細菌の塊を菌泥という。病斑外周は黄色の暈(かさ;ハロー)を生ずる。病勢の進展が激しいと、病葉は全体が黄化し、早期枯死して落下する。葉柄、茎、莢にも水浸状の赤褐色~黒褐色病斑が形成され、この部分は若干陥没する。

    発病しやすい条件

    主として種子伝染によって発生する。被害茎葉が第一次伝染源となる場合もあるとみられるが、病原細菌は翌々春の作付けまでは生き残らないと考えられており、連作しない限りその可能性は低い。種子伝染による初発は気象条件やだいずの生育にはあまり影響されず、播種約1カ月後の6月中旬に認められる。その後、除草機(=カルチベーター)による中耕除草などの圃場管理作業により、7月中頃から急激に蔓延する。しかし、個々の発病株の発病程度は、開花期頃まで軽微なものが多い。

    防除のポイント

    多発しない限り被害が生じることはないので、汚染種子の使用や連作をすることがない限り、一般圃場では防除の必要はない。種子生産圃場では、6月中旬~7月上旬までの間圃場観察を徹底し、発病株を認めた場合は抜き取りを行い、抜き取り直後とその1週間後に圃場全面に農薬(殺菌剤)散布を行う。

    べと病

    • べと病(葉表) べと病(葉表)

      べと病(葉表)

    • べと病(葉裏) べと病(葉裏)

      べと病(葉裏)

    • べと病による子実の被害 べと病による子実の被害

      べと病による子実の被害
      (池谷原図)

  • べと病

    発生する部位

    葉、莢、子実に発生する。だいずに広く発生している常発病害である。抵抗性弱品種では多発した場合減収する。黒大豆では汚粒による品質低下が大きな問題となる。種子伝染で稚苗期に全身感染すると、早期に枯死するため被害が大きい。

    被害の特徴/見分け方

    はじめ、葉の表面に黄白色の小斑点を多数生じ、その後病斑は暗灰色となり、葉の裏に汚白色のかび(分生子)を形成する。このかびは病斑が古くなると消失することがある。種子が侵されると種皮に灰色を帯びる黄色の斑紋が現われ、汚白色の菌糸がマット状に付着する。種子伝染で全身感染すると複葉全体に症状が現れ、落葉枯死する場合がある。

    発生しやすい条件

    多雨や多湿時、密植や過繁茂で風通しが悪い時に発生が多い。発病して枯死した茎葉組織内の卵胞子で越冬し、第一次伝染源となる。また、病原菌が表面に付着した汚染種子で種子伝染する。病原菌はだいずのみを侵す。

    防除のポイント

    健全無病種子を用いる。連作を避ける。密植を避け、風通しを良くする。
    抵抗性やや弱以上の黄・青大豆では防除は不要である。発病期に農薬(殺菌剤)の茎葉散布が有効である。

    斑点病

    • 斑点病、葉の眼点状症状(堀田原図) 斑点病、葉の眼点状症状(堀田原図)

      斑点病、葉の眼点状症状
      (堀田原図)

    • 斑点病、子実の斑紋病斑 斑点病、子実の斑紋病斑

      斑点病、子実の斑紋病斑
      (谷井原図)

    • 斑点病、莢の症状(田中文夫原図) 斑点病、莢の症状(田中文夫原図)

      斑点病、莢の症状
      (田中文夫原図)

  • 斑点病

    発生する部位

    葉、子実に発生する。収量に対する影響は明らかではないが、被害子実は汚粒となり、品質が低下する。

    被害の特徴/見分け方

    はじめ下葉に2~8mm大の円形褐斑を生じ、次第に中央部灰色~黄褐色、周縁は濃褐色となり、蛙の眼のような症状(英名:fogs eye)となる。発病はやがて上位葉に及ぶ。茎や葉柄の病徴は黒褐色で長さ10mm程度の円柱形の両端のとがった斑点(=紡錘形斑点)となる。莢では2~4mm大の円形病斑を生じ、周縁濃褐色、内部は淡褐色である。被害の著しい莢の子実は灰黒色~紫色の斑紋が生じたる汚染粒となる。

    発病しやすい条件

    種子伝染する。また被害組織中で越年し、翌年の感染源となる。生育期間中の降雨により胞子形成が促進され、発病は急激に増加する。莢の発病は成熟期近くになって見られ、病斑に接した子実は感染し、翌年の感染源となる。温暖で降雨の多い気象条件下で多発する。胞子形成温度は20~30℃である。病原菌はだいずのみを侵す。

    防除のポイント

    抵抗性品種を栽培する。健全種子を使用する。収穫後、被害茎葉は集めて焼却する。

    茎疫病

    • 茎疫病、根と茎が褐変(児玉原図) 茎疫病、根と茎が褐変(児玉原図)

      茎疫病、根と茎が褐変
      (児玉原図)

    • 茎疫病、茎の分岐部が褐変(児玉原図) 茎疫病、茎の分岐部が褐変(児玉原図)

      茎疫病、茎の分岐部が褐変
      (児玉原図)

  • 茎疫病

    発生する部位

    茎、葉、根に発生する。全身病徴となることが多い。

    被害の特徴/見分け方

    だいずの生育期間全般にわたって発生する。幼苗期では、茎の地際部に細長い斑点の周りが黒っぽい緑色の病斑(水浸状病斑)が現れる。病斑は進展すると、葉が萎れて、やがて苗立枯状となり枯死する。生育期では根部や主茎の地際部、時にはそれより上部の主茎および分枝茎に楕円形~やや先の尖った褐色病斑を生ずる。その後拡大して大型となり、茎の全周を覆うようになり、根も褐変して根腐症状となる。やがてだいずの生育は停滞し、葉は黄化して萎れ、ついには枯死する。病斑の表面には白色粉状のかびが生ずる。これは病原菌の菌糸および蔵卵器である。多くの場合、その後、病斑部には淡褐色~灰褐色のかびが生ずる。これはフザリウム菌などの二次的なカビの寄生によるものである。

    発病しやすい条件

    この病害は、土壌伝染する。病原菌は卵胞子で土中越冬し、翌年、土壌の高水分条件下で発芽し、多量の遊走子のう、遊走子を形成する。遊走子はアズキの胚軸や地際の茎部に付着、侵入して感染し、第一次伝染源となる。種子伝染の可能性はほとんどない。発病温度は15~32℃、最適温度は25~28℃である。また、土壌水分に大きく影響され、圃場が多水分となりやすい条件下で発病が激しくなる。温度条件を満たされても土壌が乾燥している条件下で発病は抑制される。したがって、感染・発病に最適な温度条件である25~28℃および土壌水分も合わさった好適条件では急激に発病し、蔓延する。

    防除のポイント

    だいずの連作を避け、適切な輪作を行う。特に水田転換畑等では心土破砕(農地に一定の間隔で亀裂が入るよう切り込みを入れ、水が通る道をつけること)、流水や浸透水の流入防止、明渠による排水対策を実施する。また、培土処理等による株元土壌の排水などに努める。抵抗性品種栽培は被害軽減上重要である。発病後から茎葉散布を行っても効果が得られないので、気象予報を参考にして大雨が予想される場合には予防散布で対応する。

    苗立枯病

    • 苗立枯病(児玉原図) 苗立枯病(児玉原図)

      苗立枯病(児玉原図)

    • 種子・苗の症状(児玉原図) 種子・苗の症状(児玉原図)

      種子・苗の症状
      (児玉原図)

    • 圃場の欠株(出芽不良)(児玉原図) 圃場の欠株(出芽不良)(児玉原図)

      圃場の欠株(出芽不良)(児玉原図)

  • 苗立枯病

    発生する部位

    主に、播種直後のだいず種子(子実)に発生する。幼苗の茎の基部にも発生する。

    被害の特徴/見分け方

    播種後、種子が発芽前に土壌中で腐敗したり、発芽しても幼根が腐敗して出芽不良となる。このような不出芽個体は、いずれも土壌が付着して団子状となる場合が多い。また、出芽した個体も、子葉が途中からあるいは全部が脱落したり、種皮が張り付いて子葉が展開しないなど異常出芽となり、生育不良となる。病原菌は各地の土壌に分布しており、土壌条件が多湿の時に発生しやすい。特に低温時に播種すると多発しやすく、出芽率が低下するので大きな被害となることがある。病原菌は、卵胞子の形で土壌中または発病して枯死した植物組織内で越年する。播種時の地温が低いほど、また低温期間が長いほど本病の発生が激しくなり、出芽率が低下する。この病原菌は数種のピシウム属菌であり、だいずの他に、インゲンマメ、アズキ、テンサイなど多数の植物を侵す。

    防除のポイント

    低温時の播種は避ける。種子消毒による薬剤防除は、卓効がある。

    リゾクトニア根腐病

    • リゾクトニア根腐病(児玉原図) リゾクトニア根腐病(児玉原図)

      リゾクトニア根腐病(児玉原図)

  • リゾクトニア根腐病

    発生部位/被害の特徴

    茎の地際部に長い褐変を生じ、病勢が進むと茎全体が濃褐色に変色し亀裂を生じる。葉は黄変し、ついには枯死する。胚軸部が褐変し出芽不良となる場合もあり、症状が激しいと根腐れを生ずる。土壌伝染し、砂質土壌や線虫汚染土壌で発生が多い。

    茎枯病

    • 茎枯病 茎枯病

      茎枯病

  • 茎枯病

    発生部位/被害の特徴

    中、下葉が萎れ、茎の地際部が黒褐色となり、内部組織は褐変する。病斑の表皮下に黒い粒状の点(=柄子殻へいしかく)が多数生じる。これは病原菌が蔓延するための胞子の塊である。

    褐色輪紋病

    • 褐色輪紋病、葉の病斑 褐色輪紋病、葉の病斑

      褐色輪紋病、葉の病斑
      (角田原図)

    • 褐色輪紋病、葉柄の褐変と莢の褐点 褐色輪紋病、葉柄の褐変と莢の褐点

      褐色輪紋病、
      葉柄の褐変と莢の褐点
      (角田原図)

    • 褐色輪紋病、葉柄の折損 褐色輪紋病、葉柄の折損

      褐色輪紋病、葉柄の折損
      (角田原図)

    • 写真提供:
      山口県柳井農林水産事務所 角田 佳則氏

  • 写真提供:
    山口県柳井農林水産事務所 角田 佳則氏

  • 褐色輪紋病

    発生部位/被害の特徴

    播種2~3週間後、胚軸部に褐変を生じる。7~9月頃に病徴は明瞭となり、地上部は草丈が伸びず、黄色くなり、その後萎れる。地際茎や根は黒褐色~赤褐色に腐敗する。病斑部に黒色のひげ状のかびが密生し、特徴のある分生子を生じる。病原菌は被害茎葉上で1年以上生存し、冷涼、多湿条件で多発する。アズキ、インゲン、ササゲ、アルファルファおよびテンサイに寄生する。なお、葉の斑点症状は北海道では確認されていないが、中国地方などの西南暖地では、夏季に葉に輪紋を伴う病斑を生じる。また、暖地では多湿条件下で葉柄や莢にも感染・発病し、通常より1~2か月早く落葉して、収量や品質を大幅に低下させることが問題となっている。莢に感染すると、種子伝染によって次年度の発生につながるため注意が必要である。

    葉腐病

    • 菌糸で葉から葉へ伝染する 菌糸で葉から葉へ伝染する

      菌糸で葉から葉へ伝染する
      (農研機構)

    • 激しい葉腐れ症状 激しい葉腐れ症状

      激しい葉腐れ症状
      (農研機構)

    • 葉、さやの腐敗と菌核の形成 葉、さやの腐敗と菌核の形成

      葉、さやの腐敗と菌核の形成
      (農研機構)

    • 写真提供:農研機構

  • 写真提供:農研機構

  • 葉腐病

    発生部位/被害の特徴

    葉やさやに発生する。はじめ小さい暗褐色の先の尖った楕円形の斑点を生じる。この楕円形の周縁は黒ずんだ緑色である。斑点は、その後拡大して不整形の大型病斑となる。湿度が高いときは病原菌の菌糸が目で見える。病斑が乾燥すると茶褐色または黒褐色となり、組織はもろくなり、容易に健全部から脱落する。重症株ではさやが腐敗・落下し、随所に病原菌の菌核が形成されて、ダイズの成熟が遅れる(いわゆる「青立ち」症状を呈する)ことがある。高温多湿年に発生が多い。

    炭疽病

    • 炭疽病、さやに生じた輪紋状の病斑 炭疽病、さやに生じた輪紋状の病斑

      炭疽病、さやに生じた輪紋状の病斑

    • 写真提供:農研機構

  • 写真提供:農研機構

  • 炭疽病

    発生する部位

    主に茎や莢に発生し、まれに葉に発生する。

    被害の特徴/見分け方

    莢の被害が最も大きい。はじめ赤褐色の不整形病斑であるが、のち莢の全面に拡大し灰白色となる。病斑は輪紋状を呈する。発病した莢は、乾燥してねじれ、種子は不完全粒となる。茎では、はじめ赤褐色の不整形の病斑を生じ、のち拡大融合して茎を被い、乾燥して灰白色病斑に変わる。葉では中肋(葉の中心部を走る葉脈=葉の背骨に当たる)の裏側に、赤褐色の病斑をつくる。これは後に灰褐色に変わる。

    発生しやすい条件

    病原菌は、種子や発病した茎葉に付着した分生子や菌糸で越冬し、翌年の伝染源となる。7~8月頃発生し、秋に降雨が多く、湿潤な天候が続くと多発する。病原菌の生育適温は25℃である。

    防除のポイント

    健全種子を使用する。種子消毒を行う。発病した茎葉は焼却する。発病初期に農薬(殺菌剤)を散布する。

    黒根腐病

    • 黒根腐病(大西原図) 黒根腐病(大西原図)

      黒根腐病(大西原図)

    • 黒根腐病、地上部の症状(大西原図) 黒根腐病、地上部の症状(大西原図)

      黒根腐病、地上部の症状
      (大西原図)

  • 黒根腐病

    発生する部位

    葉に初期症状が現れ、茎および根に症状が拡大する。

    被害の特徴/見分け方

    発病すると葉がしおれ、株がしだいに枯死する。発病株の地際部および主根は褐変しており容易に引き抜くことができる。発病株の主根上部あるいは地際部に赤色で球形(直径は0.5mm程度)の子のう殻を多数形成することがある。また、主根の表層あるいは細根の組織中に褐色の微小菌核を多数形成する。

    発病しやすい条件

    土壌中に生存する微小菌核が感染源となる。したがって、土壌中での生存期間は長い。病原菌が根に侵入し感染・発病が開始される時期は比較的早く播種後2~4週間目とされている。また、本病は排水不良の圃場での発生が多いとされている。さらに、降水量と発生量の間に相関があることが指摘されている。

    防除のポイント

    連作を避ける。田畑輪換が有効とされる。

    黒根病

    • 黒根病(谷井原図) 黒根病(谷井原図)

      黒根病(谷井原図)

  • 黒根病

    発生する部位

    茎の地際部、根。

    被害の特徴/見分け方

    はじめ茎の地際部およびそれに続く根の部分に、黒色の斑点が現れる。これが次第に拡大して根の周りを取り巻き茎はくびれ、病斑部は脱落する。脱落部分から新しい根が生じるので、地上部はかろうじて支えられるが、ダイズ株は容易に倒れ、また抜き取ることが出来る。発病株は生育が劣り、茎葉はやや黄色くなる。

    発病しやすい条件

    病原菌は土壌伝染する。沖積土壌では、火山灰土壌よりも発病しやすく、また乾燥土壌では、この病気の発生が多い。品種によって発病が異なる。

    防除のポイント

    連作を避ける。抵抗性品種を栽培する。

    落葉病

    • 落葉病、茎の内部の褐変(児玉原図) 落葉病、茎の内部の褐変(児玉原図)

      落葉病、茎の内部の褐変
      (児玉原図)

    • 落葉病、茎葉の黄化症状(児玉原図) 落葉病、茎葉の黄化症状(児玉原図)

      落葉病、茎葉の黄化症状
      (児玉原図)

  • 落葉病

    発生する部位

    初期症状は葉であるが、その後全身症状となる。

    被害の特徴/見分け方

    北海道で9月上旬になると、本病に感染しただいずは、中~下葉に病斑が見られないまま、霜に当たったように萎れ始める。ぱらぱらと落ちる(つまり落葉=ラクヨウ)症状は、アズキの落葉病のように顕著ではないが、かなり急速に萎凋し始め、しだいに株全体に広がり、葉は枯れあがって落葉する。病徴の進展が遅いときは、葉の周辺や葉脈の間が枯死する。発病しただいずの茎を縦断すると、内部が褐変している。この褐変は地下部から地上部へとつながっている。

    発病しやすい条件

    連作頻度の高い圃場で発病が多い。その原因として、発病しただいずの残渣の量が増加することのほか、土壌中で越冬した分生子の密度増加が大きく影響しているためと考えられる。だいずの茎の内部の褐変する時期や褐変の進み方は、低温年の方が出現時期が早く、褐変の伸展上昇も速やかとなる。ちなみに病原菌であるカビの生育適温は、カビとしては比較的低くい20℃前後である。

    防除のポイント

    伝染源の主体は病気に罹って死滅しただいずの茎葉や根(=罹病残渣)、つまり被害茎葉なので、これを焼却処分するか、完熟堆肥化する。

  • *:北海道病害虫防除提要(第7版:一般社団法人北海道植物防疫協会刊)より引用

    謝辞:病害解説作成にあたり、「北海道病害虫防除提要」に負うところが多い。 記して謝意を表する。

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  • ファンタジスタの上手な使い方

    ファンタジスタ顆粒水和剤は、開花20-35日後に2000~4000倍で散布することで紫斑病に対して高い効果を示す。また、開花期以降に2000倍で散布することで、菌核病・灰色かび病に高い効果を示し、同時防除することができる。

    ファンタジスタフロアブルは、紫斑病対策剤として無人航空機による散布にも対応しているので、農薬散布の省力化を図ることができる。なお、耐性菌の発生リスクを低減するため、連用は避け、使用回数は1作1回を心がける。