【ビスピリバックナトリウム塩(BS)の性質と使用法】
- 1. 名称
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一般名 |
: |
ビスピリバックナトリウム塩 |
化学名 |
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2.6-ビス(4.6-ジメトキシピリミジン-2-イルオキシ)安息香酸ナトリウム |
CAS登録番号 |
: |
[125401-92-5] |
構造式 |
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- 2. 物理化学的性質
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分子式 |
: |
C19H17N3NaO8 |
分子量 |
: |
452.36 |
概観 |
: |
白色粉末 |
融点 |
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223-224℃ |
蒸気圧 |
: |
5.04×10-9mPa (25℃) |
分配係数 |
: |
log Pow=-1.03 (Octanol-Water) |
溶解度 |
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水 7.33 g/100ml(25℃)
メタノール 2.63 g/100ml
アセトン 4.34×10-3 g/100ml
トルエン 1.68×10-3 g/100ml
n-ヘキサン 3.56×10-4 g/100ml |
安定性 |
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水中(pH 5-9)、27℃で32日安定 |
- 3. 安全性
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(1)人畜毒性: 普通物
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急性経口毒性 |
: ラット(雄) LD50 4111mg/kg
ラット(雌) LD50 2635mg/kg
マウス(雄) LD50 3524mg/kg
マウス(雌) LD50 3524mg/kg |
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急性経皮毒性 |
: ラット(雄) LD50 >2000mg/kg
ラット(雌) LD50 >2000mg/kg |
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皮膚刺激性 |
: ウサギ 無 |
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眼刺激性 |
: ウサギ 軽微 |
(2)魚毒性: A類相当 |
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ミジンコ |
TLm(48時間) >1000ppm |
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コイ |
TLm(96時間) >1000ppm |
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ニジマス |
TLm(96時間) >100ppm |
(3)催奇形成: 無 |
(4)変異原性: 無(陰性) |
- 4. 作用機構
- ビスピリバックナトリウム塩は安全性の高いイネ用除草剤の有効成分です。植物の根部および茎葉基部並びに茎葉部から吸収され、植物体内の分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の生合成に関与するアセト乳酸合成酵素(ALS)を阻害するため、植物は生長に不可欠な分岐鎖アミノ酸の生産量が低下し、体内のアミノ酸バランスが崩れて枯死に至ります。本薬剤の植物に対する効果は3種の分岐鎖アミノ酸の同時添加により打ち消されることから、本薬剤はALS以外にターゲットを持たないと考えられます。なお、ALSは動物体内には存在しませんので、これがビスピリバックナトリウム塩の動物に対する毒性が低い理由です。
- 5. 使用方法
- ビスピリバックナトリウム塩は水溶性が高いので、10 mMの水溶液を作成してそれを冷蔵保存して使用することをお勧めします。保存が長期化する場合には冷凍保存する必要があります。培地への添加方法は、滅菌した培地に滅菌フィルターでろ過した1000 倍濃度のビスピリバックナトリウム塩溶液を加えるという方法を推奨します。例えばビスピリバックナトリウム塩を100 mlの培地に添加して最終濃度を1μMにしたい時は、10 mM溶液を10 倍希釈して1 mMの溶液を作り、これをフィルター滅菌後にその0.1 mlを滅菌した100 mlの培地に添加します。植物細胞によって感受性は少しずつ異なりますが、イネ(品種:金南風)の培養細胞の場合、0.1μMのビスピリバックナトリウム塩によってかなり強く増殖が抑制され、1μMになると完全に阻害されます(下図)ので、培地に添加するビスピリバックナトリウム塩濃度は0.25μM-1μMが好ましいと考えられます。弊社では形質転換イネカルス(品種:金南風、日本晴、台中65号)の選抜の際には0.25μMのビスピリバックナトリウム塩を、またシロイヌナズナの形質転換種子の場合には0.1μMのビスピリバックナトリウム塩を使用し良好な結果を得ています。増殖阻害効果が弱い場合には薬剤濃度を上げて下さい。なお、分岐鎖アミノ酸が多量に形質転換植物の選抜培地中に存在すると、ビスピリバックナトリウム塩の効果が低下あるいは消失します。但し、種子法で使用されるN6D培地で用いられる300 ppm (300 mg/L) のカザミノ酸に含まれているアミノ酸は影響しないことを確認しています。
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