アセト乳酸合成酵素(ALS)は植物や微生物が持つ分岐鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)生合成経路上の酵素(下図)です。シロイヌナズナおよびイネ由来の本酵素はALS阻害剤であるビスピリバックナトリウム塩(BS)、ピリチオバックナトリウム塩(PS)およびピリミノバック(PM)により強く阻害されます(阻害50%濃度は10nM程度)が、W548L/S627I 2点変異型およびS627I 1点変異型ALS遺伝子から発現する変異型ALSは、前者はBSに対して、後者はPSおよびPMに対して強い抵抗性を示します。W548L/S627I 2点変異型およびS627I 1点変異型ALS 遺伝子を組み込んだ植物はこれらのALS阻害剤に抵抗性となるので、組換え体をこれらの薬剤で選抜することができます。
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W548L/S627I 2点変異型イネALS遺伝子(DDBJ/GenBank/EMBL accession No. AB049823)は、ビスピリバックナトリウム塩に対して抵抗性を示すイネ(品種:金南風)の培養細胞より単離しました。またW574L/S653I 2点変異型シロイヌナズナALS遺伝子は対応する変異を遺伝子工学的手法で導入しました。
S653I 1点変異型シロイヌナズナALS遺伝子およびS627I 1点変異型イネALS遺伝子についても遺伝子工学的手法により作製しています。これら2点変異型および1点変異型ALS遺伝子はシロイヌナズナ及びイネの形質転換マーカーとして機能することを確認しています。ALSのN末端には葉緑体へ移行するための シグナルペプチドが存在します。この部位の性質は植物間、特に単子葉植物と双子葉植物の間では異なっていることから、双子葉植物の形質転換用マーカーとしてシロイヌナズナ由来のALS遺伝子を、単子葉植物の形質転換用マーカーとしてイネ由来変異ALS遺伝子を提供しています。
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